どもども病院は嫌いじゃないけど歯医者は嫌いなくまんです。
先日いとこの子がぼくと同じ病気を発症したので、病気について話してみようかと思います。その名も・・・
「ネフローゼ症候群」
カタカナの聞いたことのない病気ですよね。
ぼくが発症したときも調べても病気の内容が分かりやすくまとめてあるサイトがなかったので、少しでも発症した人のチカラになればと思います。
当事者のハナシも見つかりにくいので、後々体験談も載せていきたいと思っています。
ネフローゼ症候群になってどんな病気か調べている患者さん、家族や友達、恋人がネフローゼ症候群になりどんなケアが必要か考えている人、いろんな人に読んでほしいと思っています。
難しい内容で頭の中がチンチラポッポーになるかもしれませんが、参考になればと思います。
ネフローゼ症候群ってどんな病気?
ネフローゼ症候群ってあまり聞きなれない病名だと思います。
ぼくも発症するまで聞いたことありませんでした。
しかし、いつ誰が発症するかわからない病気です。
タンパク質が流れ出る腎臓の病気!
ネフローゼ症候群は腎臓の病気です。
ストレスなどの要因により腎臓の糸球体(ろ過の網のようなもの)が炎症を起こし、ろ過機能が著しく低下し一部のタンパク質がろ過できず尿として排出されてしまう病気です。
簡単に言うとろ過器の膜が炎症が起きて膜の網目が大きくなり、砂粒まで流れ出ている状態のようなものです。
その為ネフローゼ症候群が直接「死」に繋がるわけではありません。
ネフローゼ症候群で腎臓が破裂するわけではないのですからね。
しかし、この病気が様々な病気を引き起こす原因になりうるのです。
タンパク質が流出するとどうなるの?
タンパク質が流出するとなにか悪いことが起こるの?と疑問に思う方もいると思います。
主にネフローゼ症候群で流出してしまうタンパク質は「アルブミン」という物質です。
このアルブミンは血中に水分を引き寄せる性質があるのです。
血中に引き寄せられた水分は腎臓を通過する際にろ過され、尿として不要な水分が排出される仕組みです。
このタンパク質(アルブミン)が減ると「低タンパク血症(低アルブミン血症)」という状態に陥ります。
これはアルブミンが不足することで血中にうまく水分が取り込めなくなる為、体に水分が留まり続け、浮腫み(むくみ)をもたらすややこしい状態です。
浮腫みを放っておくと最悪「胸水」という肺に水が溜まった状態になり呼吸困難になるなど複数の症状を引き起こします。
主な自覚症状
主な自覚症状は・・・
- トイレの回数が増えた(初期症状)
- トイレの回数が減った(中期症状)
- おしっこが泡立ちやすい
- 脚が浮腫みやすく、浮腫みが引かない
- 体重が最近極端に増えた
- 血圧が高くなった
- 全身の極度の倦怠感(だるさ)
ぼくの場合もすべての症状が出ていました。
脚が浮腫んでクッションを脚の下に噛ませて寝ていましたね。
この脚の浮腫みはしゃがんだり、座ったりするのも痛みが伴うくらい浮腫むので異常がはっきりとわかります。
また、全身の倦怠感もかなりのものです。
ベッドから起き上がるのが本当に苦痛なくらいでした。
血液検査、尿検査でわかる症状
病院や健康診断などで行われる血液検査、尿検査で発見される症状は以下のようなものが多いです。
- 血液中のタンパク質の減少
- 血液中の脂質量の増加(高脂血症)
- 尿中のタンパク質の増加(尿蛋白+)
血中のタンパク質が体外へ流れ出る為、血中のタンパク質が欠乏し(低タンパク血症)し尿蛋白が増加します。
また、高脂血症になり、ドロドロ血になる為、放っておくと血栓ができ、脳梗塞などの原因になってしまいます。
確定診断は腎臓の組織検査が必要
ネフローゼは症状が他の病気にも似ており、確定診断をする場合は腎臓の組織を顕微鏡で検査する必要があります。
いわゆる「腎生検」と呼ばれるものです。
検査自身は1週間程度の入院でできます。
局部麻酔を施し、腎臓まで針を進め、腎臓の組織の一部を取り出し顕微鏡などの詳しい検査をする方法です。
しかし、腎臓は血液ろ過の機能により血液が集中している場所な為、検査後激しい運動などができません。
万一、激しい運動や重い荷物を持ち上げるなど負担をかけると腎臓から出血をする恐れがあるからです。
そこで1週間程度の安静を確保する為に、同様の期間の入院が必要になるわけです。
治療方法はステロイド投与がメイン
実は、このネフローゼ症候群については発症の仕組みなどが解明されていません。
その為、治療は基本的に投薬治療が主です。
有効であると言われる薬が「ステロイド」です。
別名「副腎皮質ホルモン」といわれる物質を経口摂取にて投薬します。
このステロイドは基本的に腎臓が作っている物質です。
これを大量に投与することにより過剰な免疫反応の抑制を促し治療をします。
- 抗炎症作用(炎症を抑える作用)
- ミネラルの代謝促進
しかし、このステロイドは諸刃の剣です。 いい作用もありますが、副作用も多数存在します。
- 免疫機能の低下
- 不眠
- 暴飲暴食の誘発
- ステロイド性糖尿病の誘発
- ムーンフェイス(顔が丸くなる)
- 野牛肩(肩部分に脂肪がつきやすくなり盛り上がる)
- 骨粗鬆症の誘発(骨がもろくなりやすい)
- 緑内障の誘発(眼圧が上がりやすくなる)
- ステロイド離脱症候群
ネフローゼ症候群は免疫機能の過剰反応が原因で大切な腎臓を攻撃してしまうことで起きます。
その為、一番効果的なのは免疫機能を低下させ、炎症を抑えることなのです。
ステロイドは免疫機能を低下させる為、治療に最も効果が期待できる反面、免疫機能が低下している為、外部からウィルスなどが入ってきても対抗する術がないということなのです。
これが、医師も本人も一番心配する副作用なのです。
また、ステロイドは腎臓(副腎)より通常作られているホルモンですが、それを外部より取り込むことにより体がステロイドを作る量を制限します。
その為、ステロイドをやめる場合は大量のステロイドを急に止めてしまうと、体がステロイドが外部より摂取されないことに対応しきれずショック状態になる場合があります。
その為、ステロイドをやめる場合は少しずつ時間をかけて減量していく必要があります。
ただし、減量中も少量ずつステロイドが足りていない状態になる為、体がステロイドの作成を増加するまで体のだるさ(倦怠感)や頭痛、関節痛がおきることがあります。
これをステロイド離脱症候群と呼ぶのです。
しかし、副作用が多いからといって怖い薬ではありません。
用法用量を守ってしっかりと服用すれば心強い味方になるのです。
初期段階には抗凝血剤も必要!?
この病気は高脂血症も症状として現れます。
これを放置すると血栓などができ、脳梗塞などの原因となる為、抗凝血剤を使用することがあります。
これを使用する場合は日常生活において注意が必要です。
ケガをした場合、血液が止まりにくいのです。
ケガや傷を負わない生活を心がける必要があります。
治療中の食生活の変化は?
治療中の食生活については気をつけなければならないことが3つあります。
- タンパク質
- 塩分
- 糖分
①タンパク質
タンパク質の摂取は注意が必要です。
タンパク質が流れ出ているんだからタンパク質を多く摂取しないとね!!
と考えがちなのですが、これは大きな間違いです。
実はタンパク質の摂取は腎臓に負担をかけるのです。
以前は不足したタンパク質を摂取するのが良いと考えられていたそうですが、現在は腎臓病を患った場合は可能な限りタンパク質を摂取しない方がよいとされています。
タンパク質は結構何にでも含まれています。
お肉はもちろん、ごはんなどの炭水化物にも含まれています。
病院では「低たんぱく米」などを使用し、お肉の代わりに麩などを利用するなど工夫をしたメニューを出しているところもあります。
②塩分
塩分は可能な限り摂取しないようにする必要があります。
塩分過多な状態が続くと腎臓に負担をかける他、浮腫みの原因にもなります。
病院では無塩パンや塩分控えめな食事を提供して頂けます。
病院によっては塩分が控えめでも美味しく食べられるように酸味や旨味を使い工夫した調理をされているところもあります。
③糖分
基本的に糖分はネフローゼ症候群とは無関係なので、好きなように食べたいところなのですが・・・
ステロイド投与による「ステロイド性糖尿病」の発症が考えられる為、制限が必要になってきます。
ステロイド性糖尿病は、ステロイドの投与により誘発される糖尿病のことで、治療の際の大きな妨げになります。
その為、糖尿病を予め予防する為、糖分の制限をしていった方がよいのです。
ステロイド性糖尿病はステロイド投与が終了すると完治する場合と、そのまま糖尿病を患ったままになる場合があり、糖尿病の因子が遺伝的にあるかどうかも関係してくるようです。
また、甘いもの(デザート)の多くは糖分のみでなく、その糖分を引き立てる為に塩分が入っています。
ケーキなどもスポンジ作成の過程で食塩を使用します。
塩分制限という観点からも可能な限り糖分も合わせて控えるべきなのです。
ネフローゼ症候群には種類がある!!
ネフローゼ症候群には一次性と二次性の2つのタイプが存在します。
一次性ネフローゼ症候群
俗に言う「原発性」といって、明確な原因疾患などがなく、ネフローゼ症候群が何の前触れや誘発もなく突然起こってしまうものです。
こちらは小児から高齢者まで起こりうる種類です。
この種類に当てはまる診断名は以下の病名があります。
- 微小変化型ネフローゼ症候群
- 膜性腎症
- 巣状分節性糸球体硬化症
- 膜性増殖性糸球体腎炎
筆者くまんの場合は「微小変化型ネフローゼ症候群」と「巣状分節性糸球体硬化症」の併発でした。
二次性ネフローゼ症候群
こちらは俗に「続発性」と言い、元々あった糖尿病や膠原病などの病気が原因疾患となり、連鎖的に誘発されたネフローゼ症候群をいいます。
この場合は腎臓以外の体にも原因がある為、ネフローゼ症候群と原因疾患の両方を治療していく必要があります。
この種類に分類される診断名は以下のようなものがあります。
- 糖尿病性腎症
- ループス腎炎
- アミロイドーシス
- 紫斑病性腎炎
- 感染症(B型肝炎、C型肝炎、HIV感染など)
- 薬剤性(非ステロイド性抗炎症剤など)
一次性ネフローゼ症候群は再発しやすい!?
この病気は再発を伴うことが多く、二次性については原因病床を取り除くことで再発を防ぐことができますが、一次性の場合は些細なことで再発をしてしまうことがあります。
一例としては、風邪やストレス、日焼けなどでも再発の起因になってしまうのです。
また、一次性は難治性と呼ばれる再発を繰り返すタイプのものもあり、治療が長期にわたる場合もあります。
予後の経過もよくない場合があり、最悪は腎不全に陥り、腎移殖を受ける必要が出てくることもあります。
ちなみに、腎臓の病気は再発が多いため、一般的に完治という言葉は使わず、寛解(症状が表面化せず落ち着いた状態)と表現することが多いです。
一次性ネフローゼ症候群は難病指定されている
一次性ネフローゼ症候群は二次性と違い原因が不明なことが多く、完治のための治療法もメカニズムを踏まえたものは確立されていません。
その為、難病指定されており、申請し認可してもらうことで医療費の一部を助成してもらうことが可能です。
特にステロイド治療中はステロイド自身が高額で大量投薬な為、長期かつ高額な医療費の負担を強いられます。
その為の緩和手段として利用していきたい制度です。
申請手続きなどは各自治体によって異なりますので、市役所や振興局などでご相談下さい。
もし、申請して不認可になったとしても高額医療などの対象になる場合があります。
高額医療とは一定金額以上の医療費支払の免除制度です。
入院の可能性も高い病気ですので発見とともに早期申請しておきたい制度ですね。
こちらについてはお近くの健康保険協会にご相談下さい。
ネフローゼ症候群の精神的影響は?
ネフローゼ症候群は病気自体、治療どちらとも精神的影響が大なり小なり存在します。
この精神的影響を周りの方は知っておいてもらうと患者さん自身の支えになると思います。
病気自体への不安感・予後の恐怖
病気自体が聞きなれない名前で、しかも症例が決して多くない病気です。
それに伴い、病気をお医者さんに説明してもらっても突然発症した方は理解する前に入院手続きをしたり、治療方針を決めたりと慌ただしく、病気と向き合う時間を十分作ることができません。
入院や治療を開始し生活が落ち着き出すと、病気への漠然とした不安がつきまといます。
また、自身で調べたりした場合でも医学部向けの専門的なページが多く、更に「予後はよくない」、「腎臓移植が必要な場合もある」などの記述が目に付き、将来生きていけるのか、腎臓がダメになって透析の導入も必要なのかと恐怖を感じることもあります。
これは恐らく本人にしか感じることができない感情だと思います。
周りの人は不安感や恐怖があることを理解した上で、特別なことをすることなく接してあげて下さい。
入院や投薬で非日常がつきまとう中で日常が近くにあると思えるだけで本人は安心感が得られます。
また、本人はインターネットの内容は一例であり、個人差があることを理解し、病気について調べていくことをおすすめします。
治療薬による感情の起伏
先ほどステロイドの影響をお話ししましたが、ステロイドは体を常時活動状態にする薬だと思って下さい。
そのステロイドの影響で本人の感情の起伏がやや激しくなります。常にテンション高めの状態が続く感じですね。
その為、少しのことでイライラしたり、嬉しくなったり、悲しくなったりします。
入院中、隣の患者さんの看護スタッフへの態度が気に入らないとか、お見舞いに友人がきてくれて嬉しいとか・・・。
また、ステロイドの副作用による不眠や、治療のための食事制限などが更にこの効果を激しくさせる一因になることもあります。
本人は無自覚な場合もありますが、自覚があると自己嫌悪に陥ったりする方もいます。
本人は薬のせいだからと割り切って考えて下さい。薬が減量してくれば感情の起伏も不眠も解消されます。
また周りの方は少し温かい目で尚且ついつも通り接してあげてください。
腫れもののさわるように接すると本人は傷つき、病気への不安を更に煽ってしまいます。
家族や大切な人の存在が治療には必要不可欠です。
ネフローゼ症候群と向き合って生きていく
ネフローゼ症候群は寛解をしても一生向き合って気をつけていかないといけない病気です。
再発要因は定かでないにしろ、日焼けや風邪などの些細なことでも気をつける必要があります。
また、発症患者数が少なく深い情報を探すのはこのネット社会でも一筋縄ではいきません。
しかし、極度に悲観的にならず主治医と治療方針を決めていって下さい。
(※可能であれば腎臓内科のある病院での治療をおすすめします。)
諦めなければ普通の生活を取り戻すことができます。
ぼくも寛解して4年たちましたが再発はしていません。
その間に風邪もひきましたし、インフルエンザにもかかりました。
それでも幸運なことに再発の兆候はありませんでした。
いつ再発するかの不安感はありますが、日々の楽しみを噛み締めながら生きています。
あまり無理をしすぎず、気分転換をする余裕を持って病気と向き合って下さい。
なにかあれば周りの人に相談してくださいね。